アーロールの思い出
おいしいモンゴル②
遊牧をしている人たちは大抵、牛を飼っている。
朝と晩の2回バケツに乳を搾り、色々なものに加工していた。
これは遊牧ゲル横に建てた三角テント(?)で、一緒にアーロールというチーズの一種を作った時。
このテントは、羊や山羊を解体(加工)するときなどにも使っていた。
牛乳は、前に書いたウルムというクリームのほか、タラクというヨーグルトやアルヒというお酒、そして色々な種類のチーズなどに加工される。スーテーツァイという塩味ミルクティーとしても飲む。
チーズは特に保存のための加工という意味もあり、ガッチンガッチンに乾燥させて固ーい状態にしたものを、糸を通してゲルの天井にジャラジャラと吊るしてあったりする。食べるとこれが酸っぱーい。そして妙に癖になる。
アーロールはそういう歯が折れるようなチーズとは違い、微妙な味わいのモロモロした見掛けをしているのが多分一般的だ。
だが、ここで作ったのはお砂糖を入れていたのか甘酸っぱくお菓子のようにおいしい。それをプラスチックの型に詰めて板の上にならべ(上の写真の状態)、何日か乾燥させた。作りながらもパクパク。
おいしくてお気に入りだった。
そうしたら、このゲル(トヤのおばさんのおうち)を去る時、お土産にと沢山のこのアーロールを糸でつないで持たせてくれた。
とっても嬉しくて、「これは是非とも日本のみんなにも味わってもらわねば!」と、袋に詰めて実家と友達の家に送った。残りは、その後のウランバートルからモスクワまでの長い鉄道のお供に持っていくことにした。
シベリアを5日間だったかな?かけて進む列車の旅は楽しかった。
列車に乗っていたのは、中国製品を東欧に売りに行く人や、逆にロシアに車を買いにきた人など様々。
出発前にトヤはモンゴル風ピロシキのような食べ物、ホーショールをむちゃくちゃ沢山作ってくれていた。保存食なので2週間くらい食べられるから、と。それをむしゃむしゃやりながら、ロシア人の太った車掌さんにはアイスをもらったり(一人で何個もアイスを食べようとしているところに通りかかったらくれた)、チビッ子と折り紙をしながら楽しく進んだ。
例のアーロールはたくさん残っていたが、大切にちびちび食べながら取っておいた。
そして到着したモスクワで、話すと非常ーーーーに長くなる様々な出来事に翻弄され(笑)、私は切符も失いビザも切れた状態で市内にポロッと放り出されることになってしまった。泥棒?いやいやれっきとした出入国審査官や国境警備兵や国際列車のおじさんなどと…(略)
それで、かなりテンパっていた私は、大量の荷物を抱えて地下鉄を乗り継ぎ、空港へ急いでいた。
非常時には核シェルターになるとかいう噂のモスクワの深い地下鉄駅の、信じられないくらい早く動くエスカレーターのすその部分には小さな「見張り小屋」があり、おじさんやおばさんが中にいる。
何を見張るんだろう?と思ったら、一度その高速エレベーターでバランスを崩したおじいさんがゴロンゴロンと(しかも上りだからいつまでも)転がり落ちる地獄絵を目撃した際、非常停止をしたのを見たので、きっといる意味もあるのだろう。
脱線しまくりの割に書きたいことは大した事じゃないのだが、とにかくその時、テンパった状態でその小屋のおばさんに道を尋ねた私は、手に持っていたアーロールや他の食料の入った袋を足元に置いたまま、忘れていってしまったのだ。
気がついたのはかなり後。へこんだ。幸せなモンゴルの凝縮を自分のドジでなくした…。
今でもたまに、ちょっとしたきっかけでその袋のことを思い出しては、「捨てられちゃったべなぁ。残念だなぁ。小屋のおばさんはびっくりしたかなぁ…。」などと思いをはせる(笑)
実家に送ったアーロールは、「…あれって、何だったの?」とものすごく戸惑って尋ねられた。
かなり不評。
友達に送ったものは、ポスト中をモンゴルのケモノ臭さで充満させて到着し、一応何とか口に入れてもらえたようだ。
だが、きっとあれがおいしかったのは、私がその場所にいたからなんだろうな、と思う。
もし今ここでどっぷり日本の生活をしているところに、例のモンゴルの酸っぱいチーズなどが突然登場したら、きっと食べるのに抵抗感が出たり、匂いにびびったりするんだろうな。
不思議なもので。
でも、また食べたい。
朝と晩の2回バケツに乳を搾り、色々なものに加工していた。
これは遊牧ゲル横に建てた三角テント(?)で、一緒にアーロールというチーズの一種を作った時。
このテントは、羊や山羊を解体(加工)するときなどにも使っていた。
牛乳は、前に書いたウルムというクリームのほか、タラクというヨーグルトやアルヒというお酒、そして色々な種類のチーズなどに加工される。スーテーツァイという塩味ミルクティーとしても飲む。
チーズは特に保存のための加工という意味もあり、ガッチンガッチンに乾燥させて固ーい状態にしたものを、糸を通してゲルの天井にジャラジャラと吊るしてあったりする。食べるとこれが酸っぱーい。そして妙に癖になる。
アーロールはそういう歯が折れるようなチーズとは違い、微妙な味わいのモロモロした見掛けをしているのが多分一般的だ。
だが、ここで作ったのはお砂糖を入れていたのか甘酸っぱくお菓子のようにおいしい。それをプラスチックの型に詰めて板の上にならべ(上の写真の状態)、何日か乾燥させた。作りながらもパクパク。
おいしくてお気に入りだった。
そうしたら、このゲル(トヤのおばさんのおうち)を去る時、お土産にと沢山のこのアーロールを糸でつないで持たせてくれた。
とっても嬉しくて、「これは是非とも日本のみんなにも味わってもらわねば!」と、袋に詰めて実家と友達の家に送った。残りは、その後のウランバートルからモスクワまでの長い鉄道のお供に持っていくことにした。
シベリアを5日間だったかな?かけて進む列車の旅は楽しかった。
列車に乗っていたのは、中国製品を東欧に売りに行く人や、逆にロシアに車を買いにきた人など様々。
出発前にトヤはモンゴル風ピロシキのような食べ物、ホーショールをむちゃくちゃ沢山作ってくれていた。保存食なので2週間くらい食べられるから、と。それをむしゃむしゃやりながら、ロシア人の太った車掌さんにはアイスをもらったり(一人で何個もアイスを食べようとしているところに通りかかったらくれた)、チビッ子と折り紙をしながら楽しく進んだ。
例のアーロールはたくさん残っていたが、大切にちびちび食べながら取っておいた。
そして到着したモスクワで、話すと非常ーーーーに長くなる様々な出来事に翻弄され(笑)、私は切符も失いビザも切れた状態で市内にポロッと放り出されることになってしまった。泥棒?いやいやれっきとした出入国審査官や国境警備兵や国際列車のおじさんなどと…(略)
それで、かなりテンパっていた私は、大量の荷物を抱えて地下鉄を乗り継ぎ、空港へ急いでいた。
非常時には核シェルターになるとかいう噂のモスクワの深い地下鉄駅の、信じられないくらい早く動くエスカレーターのすその部分には小さな「見張り小屋」があり、おじさんやおばさんが中にいる。
何を見張るんだろう?と思ったら、一度その高速エレベーターでバランスを崩したおじいさんがゴロンゴロンと(しかも上りだからいつまでも)転がり落ちる地獄絵を目撃した際、非常停止をしたのを見たので、きっといる意味もあるのだろう。
脱線しまくりの割に書きたいことは大した事じゃないのだが、とにかくその時、テンパった状態でその小屋のおばさんに道を尋ねた私は、手に持っていたアーロールや他の食料の入った袋を足元に置いたまま、忘れていってしまったのだ。
気がついたのはかなり後。へこんだ。幸せなモンゴルの凝縮を自分のドジでなくした…。
今でもたまに、ちょっとしたきっかけでその袋のことを思い出しては、「捨てられちゃったべなぁ。残念だなぁ。小屋のおばさんはびっくりしたかなぁ…。」などと思いをはせる(笑)
実家に送ったアーロールは、「…あれって、何だったの?」とものすごく戸惑って尋ねられた。
かなり不評。
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不思議なもので。
でも、また食べたい。
by ushimaton
| 2006-04-28 01:48
| ウシ話
気が小さいのに、珍しいものは好き。 道草を喰って、たまに反芻したり。 牛歩ではありますが。
by ushimaton
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