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最後の日々

この先の予定をつめるための情報収集に、ネットカフェにやってきた。
わー都会!(爆)

久しぶりにPCからの投稿。写真なしですみません。
書きかけだった記事も、携帯と一緒に昇天してしまったし…。

そういうことで。
ちょっとさかのぼって、島を出るまでの話を少し。



先週末が最後の仕事となった。
入梅宣言の直前だったか、とてもとても暑い日で。
免許を取って帰ってきてから乗った乗り物の中で、原付に次いで一番たくさん乗ったのではないかと思うちびトラクターで、牧草畑の灌漑用点滴ホースを巻き取るのが、最後の勤め。
日光に炙られた黒いホースは灼熱で、中に残っている水は熱湯で、軍手の中の私の手をボイルしようとたくらんでいたようだった(-_-;)
ここまで怪我なし病気なしできて、最後の日にやけどで診療所の世話になるかと思った。

この日は農場のほぼ全員が、親方命令により午後3時までに早上がりをした。
私もギリギリ終了。
ああよかった。ずっと気になってたの。巻き取り中途半端で仕事終わりたくないなあって。
ファイルメーカーも、定期的に自動バックアップするところまで作ることができたし、親方にその時の“練習”も監督してあげた(USBフラッシュメモリを差し込んで“OK”を押す練習…爆)。


早上がりした私たちは、肉と野菜とバーベキューセットとシュノーケルと浮き輪を持って、海岸へと行った。
「今日は波がないから、外海に出られるぞ。」と親方。
「そとうみ…無理だよ、怖い!」と泳げないかぼちゃ娘たち。
島の周囲がすべて断崖絶壁であるここで、泳ぎの得意でないものが泳げる場所はほとんどない。
島の2箇所にある、岩を掘って作った「プール」がせいぜいなのだ。
プールは深さがせいぜい2mほどで、潮が満ちると外海とつながるので、中にはいろんな魚が泳いでいてとても楽しい。だがその外に広がる「外海」は、いきなりドン深になっている危険水域で、潜りの得意な丈夫な人だけが魚やタコを取りに潜る。
前も書いたが、なにしろ陸からの投げ釣りでマグロなんかが釣れてしまうような島だからね。

だがこの日は本当に波が小さくてうまい具合にひいていて、シュノーケルと浮き輪に身をかためたかぼちゃ娘卒業生たちは、泳ぎの得意な人々についてもらって、ついに外海に出たのだった。

す…………
すっごーーーーーーい!!!!

「プール」でも十分満足できる楽しさだったのに、外海はまた全然違う!!
青い青い澄んだ水と、水底の岩場の変化豊かな地形。
その岩場の合間を、さまざまな魚が群れて泳いで、岩陰ではタコが砂を吐いて、空からは光がまっすぐにさしかかって。
水底には、この島ではほとんど見られない白砂。
沖縄らしい珊瑚礁ではない。荒々しい岩の地形だ。
だけど、逆に言えば、他では見られない海でもある。
この島の海の青さは、深い群青色。ふつう海岸から眺められるような色とどこか違った、大洋のただ中の色。深海から突然飛び出したここだから見られる色。

1年と7ヶ月の島生活、もう終わりになって初めて、この島が人に見せ渋る世界を覗き見てしまった。
「私この島は『鬼ヶ島』だと思ってたけど、実は『竜宮城』だったんだねー。」
なんて、ちょっと大げさにヨイショした言葉を言いたくなった。

海から上がって、バーベキューをつまみながらビールを飲んで、西に傾く太陽の光を浴びながらまったり。
仕事納めの今日は、最後のビーチパーティの夜だ。
うみんちゅが持ってきてくれた、とれたてのカツオを、シロッパ(ヤシ)の葉で炙ってタタキにする。料理の得意な同僚がおいしく調理する。
潜ったついでに捕ってきたタコやサザエもついでに炙ってみる。
すっかり家族みたいに気兼ねのない人々と、笑いながら。

残念ながら、何もかもをすっきりさせて出て行くわけではない。
どちらかというと、努力を尽くしてやり残して押し出されるような、そんな気持ちにもなってしまう終わりでもある。
だけど、やっぱり人々は優しくて。
何も変わらずに流れる時間がそこにあって。

複雑で塞いだ気分で、途中からは岩陰に座って、これまで何十回もそうして過ごして来たように、海を眺めて一人でぼんやりしていた。

バーベキューの横では、どこから見つけて引きずってきたのか、でかい倒木をくべて豪快なキャンプファイヤーを焚き始めた。

すっかり日が落ちた海岸で、大ざっぱな焚き火に照らされながら、お別れ会の締め。
今まで何度も参加したお別れ会のように、親方が挨拶をして、同じ時期に退職する同僚と私に順番に挨拶を促す。
挨拶は苦手だけど、みんなに伝えたいことを伝える、たった一度の機会でもある。
わたし、やめるときには、これまでひとりでかかえていたことを、いってしまおうとおもってたんです。
だまっていることがだれのためになるともおもわないから。

だけど、やめた。
誤解されたままとか貧乏くじとか、そのままでも、いいや。
何も知らなくても、これだけ暖かく大切にしてくれる人たちがいるんだから。

「いろいろ面倒くさくて使いにくい人間だったと思うけど、ここまで大事にしていただいて、ありがとうございました。」
「なに言ってる。」モゴモゴした突っ込みが入る。
「1年半の間、本当にお世話になりました。」
なんて言葉を言えばいいのかわからなくて、そういう時いつも黙りがちになってしまう。そして、出てくるのはありきたりな言葉ばかり。
黙りながら、心がこの島に来たばかりのころの自分を引っ張り出してきた。
そう、あのころって、今と全然違ってた。
何も多くは期待しまい、と、防護の網をめぐらせて。
「…ここに働きに来たころは、ただ仕事のために来ているんだ、って割り切っていました。」
だけど。結局、こんなに暖かく裏切られて。
「だけど、…ここでの1年半は、とても大切な、人生の一部になりました。」
ありがとうございました。顔を上げて眺めると、すっかりなじみの人々の笑顔に囲まれているって、改めて実感する。焚き火とみんながぼやける。
「皆さんと一緒に、過ごして来れて、良かったです。ありがとうございました。」
頭を下げる。バカみたいにしゃくりあげてしまう。
終わった。


次の日は、またちょっと違うメンバーでのお別れ会だった。
カラオケで盛り上がって元気をたっぷり補給した。

帰る前日はカジュにいが、馴染みの人々や親しくしていた大学生の鳥類研究グループの人たちを呼んで、賑やかな送別会をしてくれた。


来たころは、牧草とサトウキビの見分けがつかなかった。
自転車以外には乗ったことがなかった。
小学生から引きずったボール恐怖症だった。
三線なんて触ったこともなかった。
人々の言葉がほとんど聞き取れなかった。
友達なんてここには一人もいなかった。


何度も言ったけど、これで最後。

ありがとうございました。
by ushimaton | 2009-05-23 15:45 | みなみにっき


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