象が戦うと蟻が死ぬ

最近はすっかり図書館の予約&取り寄せサービスを利用しまくっている私。
インターネットで簡単に、市内のすべての図書館や地区センターなどの蔵書が検索でき、さらに最寄の施設で貸し出しの予約をしたり、そこまで届けてもらったりできるのだ。

この前借りて読んだのが、久郷ポンナレットさんの色のない空という本。
カンボジアの、ポル・ポトの大虐殺を生き延びて、日本に難民としてやってきた女性が書いた本だった。

f0032403_2340521.jpgポンナレットさんのプロフィールを読んでみたら、私とたったの10歳くらいしか違わなかった。
同じ時間を生きてきている人なのに…。

私が生まれた年、カンボジアでは新たに政権を取ったクメール・ルージュのポル・ポトによる大虐殺が始まった。

当時10歳だったポンナレットさん一家は、ただ「都会に住んでいた」という理由だけで、すさまじい虐待・虐殺の対象となった。
どこの国も同じ。都会は、田舎から移住してきた人々で成り立っている。
しかし、たどっていけば自分の親戚とも必ずつながっているはずなのだが、クメール・ルージュの政策に同調した人々は、都会に住んでいた、そして都会を追われて田舎へ連れて来られた人々を、憎み、蔑み始めた。

人々は過酷な労働で死に、栄養失調や病で死に、そして理由もなく殺されて死んだ。
ポンナレットさんの両親もきょうだいも連れ去られ、殺された。
飢えのあまり、虫を捕まえて食べていると、「虫がかわいそうだからやめろ」と叱られる。
虫も殺さないほどの敬虔な仏教徒であったはずのカンボジアの人々が、この時代には同じ国の人々を、数百万の単位で殺していた。

どうしてだろう?
カンボジアの人は、私たちと全く違う種類の人間なのか?
田舎の人は都会の人より残虐だったのか?
これはカンボジアでしか起こりえない、不可思議で訳がわからないことなのか?

たぶん、きっと、ぜんぶ違う。


長くなっちゃったからこの先は折りたたみで…。↓




読みながら思い出していたことが3つあった。

メキシコ旅行の途中で会った、カンボジア系カナダ人の女性、アイシャ。
私が初めてカンボジアという国を(ようやく)意識する事になったきっかけが、彼女だった。
メキシコのレンガやバラックの家と土埃の舞う道を眺めながら、故郷を思い出して懐かしんでいた。
普段はカンボジアの話を特にすることもなかったが、何かのきっかけでふと時折口にする。

「小さな赤ん坊の足を持って、木に打ちつけて殺すのを見た。」
「弟と生き別れているけれど、多分生きていない。」

私の想像の枠を飛び出すような話にただ驚いていたのだが、この本を読んでいて、彼女が言っていた言葉が誇張したものではないというのがよくわかった。
ポンナレットさんもアイシャも、今でもカンボジアを想い続けている。


それから思い出したのが、ちょうど少し前に本屋で立ち読みしていた本、森達也と姜尚中の戦争の世紀を超えて
とみちゃんのおすすめ本だ。
難しい(というより重い)本なので、とても立ち読みでさっくり読めるもんではなかったが、彼らがナチスの虐殺の歴史のある村を訪れたりしながら、悩み模索していたテーマはわかった。
『何故、ある日突然、人は隣人を殺せるのか』。
民族の違いというのが、その本質的な理由だったのか?
ナチスの洗脳が理由だったのか?
そして、自分たちと関係ない、異質な人々の起こすことなのか?

f0032403_23155076.jpg殺す側と殺される側に、人間性に大きな違いがあるのだろうか?たぶん、違う。
私と、殺していた彼らと、殺されていた彼らは、たぶん本質的にはそんなに変わらない。
例えば今、世界の人間がぜんぶ「私」になっても(きちんと想像するとイヤ過ぎる…^^;)、たぶん戦争は続く。

“無関係で理解できない、不思議な話”で片付けてはいけないんだ、きっと。
それ以上はまだわからないけど、それだけは感じた。


そして、神奈川で私も少し参加していた、カンボジア系難民の支援をしているボランティアの事を思い出した。

命からがら脱出して日本へやってきたポンナレットさんは、日本でも様々な困難に苦しむ。
恐ろしい記憶で眠れない夜を過ごし、言葉や教育の障壁を越えるために16歳で小学校に入り、「外国人」という理由で仕事も見つからずに苦労する。
すれ違いざまに「いくら?」と訊かれた事もあるとか!ひゃーなんて恥ずかしいオッサンが野放しになってるんだ!(>_<;)

私が参加していたボランティアの活動に、子供たちの勉強を見る、というのがあった。
「言葉がちゃんとわからないとか様々な理由で、授業についていけなくなり、自分を持て余して“不良”になる子供たちがたくさんいる。そんな子達を見て『外国人は怖い、ダメだ』と思う人々が増えてしまう悪循環もある。」
その活動の理由に、そんなことを言っていたのを思い出した。

“不良”になる子供たちに原因があるわけじゃない。
それしか行き場がないような厳しい社会を突きつけている私たちの、思い込みや偏見が、ポル・ポトとは違う形でじんわり彼らを圧迫している表れだ。


なーーんて。
かなり重たい内容になってしまった…(-_-;)

まさに渦中にいた本人の書いた体験談なので、専門家の分析などとも違う、かえってすごく『伝わる』本だった。
ほとんど知らずに生きてきている自分が、ちょっと申し訳ないような気持ちになるなー。
リアルタイムで起こっているイラクなんかのことも思い出したり。

『象が戦うと蟻が死ぬ』というのは、この本に出てきたカンボジアの格言の一つ。
大国の思惑に翻弄され、ゲームのように戦争を起こされ、政権はめまぐるしく変わり、そんな足元で、そこに昔から住む人々が苦しい目に遭う。

ここまでわかっているのに、やっぱり繰り返すのかなぁ。


f0032403_23405116.jpg
こんな本も借りてるんだけど…
案の定、ほとんど読んでいないうちに返却期限が。
だって英語なんだもん(笑)

いいの。コピーして持っておくから。(^^;)

by ushimaton | 2007-04-13 23:56 | おすすめ!


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