愛する大根畑

大根は、私の小清水の7割5分くらいを占める。

6年前小清水に来て、松次郎さんの作品展の受付をしていたとき、私の全財産は2万円くらいだった。
自転車で札幌に帰るには心もとない金額だ。
季節は夏の終わり。畑作農家の繁忙期だった。
「畑のアルバイトとか、どこかでさせてもらえないでしょうかねー。」
松次郎さんともう一人のそこで会った人に聞いてみたら、知人に当たって探してくれた。
「同じアパートの奴が働き先に聞いてくれた。」と言ってもらった直後、もう一人が「妹の旦那に当たってもらったんだけど、ギリギリでもう決まっちゃったんだって。」との報告。
聞いたら偶然にも同じ農家の事だった。つまり「ギリギリで決まった」のも私の話だったのね。
それが、大根や人参、ごぼうなどを作っているこの農家だったのだ。
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っていうか壮観!なんじゃこりゃ!

久々に訪問した親分ちの大根選別工場は、なんか壮大になっていた。


初めての農業。私がここでデメンに雇ってもらって、最初にした仕事は、大根抜きだった。
この農家では野菜を育てるところから選別、箱詰め、出荷まで、すべて自分たちでやっている。
朝6時半、朝露でぐしょぐしょになるためカッパを着こんで、大根畑へ。4、5人が横一列に並び、大根の畝と畝の間に立つ。
自分の両脇に生えている大根を両手で2本同時に引っこ抜き、目の前で待機している「動くベルトコンベアー」みたいな機械に乗せ、一歩後ろに下がって次の大根を抜く。
「動くベルコン」にはキャタピラがついていて、私たちが後ろ向きに進むのと同じ速度で動いてついて来る。
乗せた大根はベルコンの端についているカッターで葉をズバズバ切られ、500キロのコンテナに積み込まれる。
大根を抜くのが遅いと、キャタピラに轢かれそうになるし、気をつけないとカッターの葉で手をズバズバやられちゃいそうになる(^^;)しかもベテランデメンさんたちはものすごく速いので、それに合わせてキャタピラが迫ってくるため、いつも慌てふためいていた。(そんな時は両脇のデメンさんが、私の畝の大根も抜いてくれる。)
コンテナがいっぱいになって交換する間、座り込んではあはあ(笑)
カッパなので大汗をかいて、カッパがすっぱくなる(^^;)
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昼前には選別工場のあるD型ハウス(農家によくあるカマボコ型の倉庫)に移り、抜いてきた大根を洗って選別、箱詰め。夕方にトラックが取りに来るまでに1000ケースくらい作っていた。

種まきから収穫まで全て携わった翌年。
大根の間引き(一箇所から2,3個出る大根の芽の、ちょうどいい大きさだけを残して他を抜き取る)もスゴイ作業だった。
大根抜きの時のように、畝と畝の間に、今度は4つんばいになって入る。そして自分の両脇の大根の間引きをしながら、果てしなく広い炎天下の畑を4つんばいでひたすら往復する。

衝撃的なハードさ。
でも、本当に楽しかった。(ベテラン半人分の仕事しか出来なかったけど。)
そして、色々な事を教わった。

デメン&親分の奥さんなどのお母さんたちは、仕事がキツくなればなるほど、ものすごくテンションが高くなる。
猛烈な勢いで手を動かしながら、強烈な下ネタを織り交ぜた冗談をぶっ飛ばしながら、エンジン音もかき消す笑い声を上げて働く。
「きつい、もう嫌だ。」と絶対言わないのだ。
「うだうだ言ったってやらなきゃならないんだから!」と、楽しく気を紛らわせながら働こうとする。

来た段階では、「がむしゃらにやる」というだけのカードしか持ち合わせていなかった私を大いに育ててくれたのもここだった。
最初の一日で「人見知りだろ」「目の前の作業でいっぱいいっぱいになるタイプだな」と見抜かれた私だったが(^^;)、そんな私に、「周囲に目を配りながら働くとはどういうことか」「他の人がやりやすいような動き方」、そんな事を仕事の中で学ばせてくれたのも、紛れもなくここだった。
もともと目の前しか見えない人間ではあるのだが、そういう人間なりに少しでもそれをカバーするやり方だってあるんだ、と、教えてもらった。
もちろん今でも半人前だが、それでもたま~に「気がつく」などというありがたい言葉をいただいてしまうのは、ここで働いた経験があったからこそだと思っている。
でもマージンとかは払わないぞ(笑)

PCで表計算ソフトやデータベースソフトを初めて使ったのもここ。
その日の納品書を作ってトラックの運転手に渡す。発車した後で入力ミスを見つけて走った事もあった(^^;)
「あれ?こんなところに多聞が。」と言いながら親分が机の下から出してくる一升瓶を机に置いて、皆でわいわいおしゃべりして、家に帰って爆睡。そんな日々だった。


ゆきちゃんとの再会の後、とみちゃんの家に泊めていただきつつ、翌朝にそんな大根農家へ。
O町を出て、今はここで働きながら酪農ヘルパーを目指している、以前同じ職場だった牛絵描きのとみちゃん(ミホちゃん)が、この日は運転免許の試験のために仕事を休むことになっていた。
なんかよくわからない成り行きで(笑)、とみちゃんのヤッケや長靴を借りて、代わりに(?)私が一日、一緒に久々の大根&人参仕事をする事になった(^^;)
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親分は体調不良でイキが悪かったが、久しぶりに会えたお母さん方は全然、全っ然、変わってなくて、すっごく楽しかった。
会うなり「きゃー久しぶりー」「あら~」などと盛り上がって、わいのわいのとお喋りしながら、一応作業を手伝いはした…のだが、ついついウキウキモードになってしまい、仕事としてはまったく役立たず(-_-;)
「なんだか5年も会わなかったって感じがしないね。」などと言われ、一人で喜ぶ。
選別中、いきなり機械が止まった。
「お昼ー!」
「え!?もう!?うそー。」

「ミホちゃん、運転免許の試験受かったってメール来た!」
「ほんとー?じゃあみんなでお祝いに行かなくっちゃ♪」
「あはは、でもミホちゃんち皿と箸ないから、各自持参しなきゃダメだよ!」
「一回とみちゃんちの“座敷風呂”見てみたくってさー。」
などとお喋りしていたら、仕事が終わってから、「で、何時に行けばいい?」と言われた。
え、本気で言ってたの!?(@_@)

そして、それぞれが忙しい主婦でもありながら、その夜みんな本当に来てくれたのだ。
各自が山盛りの手土産を持って。
仕事をしながら「ひろちゃん(私)のいる間にまたピザを焼きたいから、うちに遊びに来て」と言ってくれたお母さん、「実は明日にはもう帰らなきゃ」と言ったら、きのこのおいしい手作りピザを焼いて持ってきてくれた!大好きなにんじんジュースと一緒に。
隣町の網走まで行って、ケーキを山ほど買ってきてくれたお母さん。
ビールやいろんな食品を持ってきてくれたお母さん。
小清水の名物お菓子や大量の食料、ネズミ対策の空き缶(食品を入れる)を持ってきたお母さん。
みんなでわいわいの祝賀会を催したのだった。
とみちゃん大感激!私もどさくさでラッキー♪
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次の日は朝7時半から大根手抜き(場所や条件によって、ハーベスター(収穫機)を使ったり、手作業になったりする)、とのことだったのだが、お喋りに盛り上がり、みんな夜11時過ぎまでいてくれた。
いや~、楽しかった!!
写真は、「細く見える角度に立たなきゃ!」と言ってナナメに立っているみなさま(笑)

「おばあちゃん」と呼んでいた、親分のお母さんにも、とってもお世話になった。
働いた最初の年は親分のおうちで昼食を食べていたので、いつもごはんを作って待っていてくれたおばあちゃんともよく話をした。
おばあちゃんの炊いたかぼちゃがすっごくおいしくて、バイト仲間の友達とハマって毎日おかわりして食べていた。喜んで食べていたら、欠かさず毎日炊いてくれた。
今回遊びに行ったら、わざわざ私のためにかぼちゃを割って、炊いて食べさせてくれた。
おいしかったし、何よりも嬉しかった。
5年前に札幌に帰ってからおばあちゃんに送った、ユニクロのボアスリッパ。今も「いたましくて(もったいなくて)使ってない」んだって。使ってよー。

前に会った時は小学生や中学生だった子供たちがみんな、それぞれの個性の方向まっしぐらに(笑)立派に大きくなっていたのにも感激。
ナマイキぶった口調で親やじいちゃん、ばあちゃんに突っかかるのだが、それでも昔ながらの気持ちの優しさが滲み出ていて、なんだかとっても可愛い(^o^)
一番下の女の子がすごくかわいい女子高生になっていたのにも仰天!(@_@)
真ん中の男の子も、トラクターをブイブイ運転したり、大事な戦力になっている。ムズカシイお年頃っぽいが、やっぱり子供の頃と同じ無邪気さと優しさをちゃんと持っている。
一番上のお兄ちゃんはもう大学生!思ったとおりの音楽系ハンサム君に育っているわVv
あ~みんなの写真とれなかったよ~!

翌日はもう札幌に帰る日。
朝、出発前にみんなに挨拶をしてから行こうと思っていたのだが、どしゃ降りの中遠くの畑で大根抜きをしているらしく、親分の家(選別工場と畑がある)に行ったが、留守番のおじさんのほかは誰も見当たらなかった。
残念すぎる。とみちゃんの写真なんて一枚も撮ってないし(-_-;)

がらんとしたD型ハウスの中。雨がどしゃどしゃ降っている。
仕事中だったらすごく忙しいし、悪いけどと悩んだが、親分の携帯に電話をしてみた。
「箱でも作って待ってろ。」
「いや、もう、行かなきゃならないから…。」
「そうか。まだしばらくかかるから。みんなにはよろしく言っておくよ。」
「はい。………」
久しぶりに会えて嬉しかったです、もっと沢山ゆっくり話せればよかったなぁ、今日は体調良くなりました?今年の大根はどうですか?色々とありがとう。埼玉で、神奈川で、O町で、すぐにへこたれて泣き言を言いまくる私に気を配ってくれて、助けられました、ありがとう。

いろいろ言いたかった言葉があって、言おうと思って口を開いたら涙が出そうになった。
口をあけたまましばし黙り込んで、やっとのことで2、3言お別れの挨拶をして、電話を切った。
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またね、タロウ。

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またね、ねこ。
by ushimaton | 2006-10-13 13:23 | ともだち&チビッコ


気が小さいのに、珍しいものは好き。 道草を喰って、たまに反芻したり。 牛歩ではありますが。


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