風オバケ
ものすごいうなりの音で目覚める。風と波だ。
ゴーゴー、ドドン、窓に何かが当たってパチパチ、扉が風圧でガタガタ。何かが外を転がってガランガラン…。
海はウサギも演歌歌手も逃げ出す大荒れだ。これじゃ十五少年漂流記かポセイドンアドベンチャーだ(観たことないけど)。
この荒れようでは、船は何日かは出せない。浮きの下のベビーホタテ達も目を回しているに違いない。私がホタテだったら酔って吐いてる(笑)
昨日の午前中だけが奇跡的に波がおさまって最後のホタテができて、本当にラッキーだった。
昨日の不吉な夢も正夢になりかねなかったぞ(-_-;)
今日から家の横の作業場で昆布の予定だったのだが、それすら中止になった。近所のデメンのおばちゃんたちすら家から出られないし、昆布がしけってしまうから。
ホタテの作業場は海岸線を30分走った海辺まで出向く(ていうか海岸線の道一本しか道はない)のだが、昆布は家の隣と前の浜が作業場なのだ。
ものすごい音が気になる。でも窓を開けるのも怖い。
「ちょっとだけ!」と、扉を少し開けて家の前の海を見た。
波ゴーゴーの写真を撮ろうと、外に出て扉に張り付いて写真を撮り、すぐ引っ込んだのだが、いつの間にか親方が様子を見に来ていた。
「なんか下から風がきたからよ。どした?」
この家は高床になっていて、普段私が使っているのは一番下の階の扉なのだが、少し扉を開けても上にわかったらしい。
ご心配おかけして(^^;)
その割にいい写真撮れなかったし。
普段は「これ意味あんの?」と思うような、海岸の波消しブロックから、砕けた真っ白い波がその先の番屋にぶつかっている。
そういえば、ホタテの作業場からここまでの途中、道の海側(山側は断崖)に、風よけか波よけの金属製のフェンスがずっと続いている場所がある。それが2、30メートルに渡って壊れ、曲がった骨組みだけになっていた。
「事故か何かあったんですか?」ときいたら、
「ううん、波だよ。」と言われた。
「正月じゃなかったかな。この辺はね、波ったらすごいのさ。」
波もすごいが、R臼の大風は、知る人の間では有名なのだ。
知床連山から吹きおろす風が、車の扉も開かないくらいに吹き付ける。屋根が飛んだりもする。
私が自転車でこの町に来て、海岸から4キロほど横断道路を登った野営場にキャンプしていた時のこと。
すでに何泊かが過ぎていて、周りの他のキャンパー達とも仲良くなっていた。
ちょっと離れた場所に、キャンピングカーで来た大学教授、元大型帆船乗組員の旅好きおじさん、会社社長ただし倒産して現実逃避中のおじさん、という、「ちょいワル!?おやじ3人組」(平均年齢還暦)という人々がいて、けっこう仲良しになった。
中でも帆船おじさんは毎年ここに来ているようで、色々詳しい。
その日は昼過ぎから天気がぐんぐん悪くなり、風や雨がはらはらと始まった。
自転車を木に縛り付け、テントのペグを打ち直して備えていたら、おじさんが来て、
「風が強くなってきたでしょ?これが『R臼おろし』だよ。」と言っていった。
その晩。それはやって来た。
まずはひたすら雨雨雨。まとめて降りまくり、テントの下が池になった。
水こそ入ってこないが、銀マットを押すとタプンタプンと波打つウォーターベッド状態だ(-_-;)
なんとなく心細くなりながらいると、急に風が強くなってきた。
すぐ、それは「強風」から「突風」に変わった。
キャンプ場を囲む山や谷間の遠くから、スゴ味のあるゴゴゴゴゴゴ…という低い音が響いてきて、木々がものすごい音で揺れている、と思ったら、信じられないような突風がテントにぶち当たった。
小さな一人用のドーム型テントがぺたんこにたわんだ。中でびっくり仰天した私は、とりあえずテントが潰れないように、慌てて中から押さえた。
風は数十秒の間猛烈に吹き、呼吸をするようにふっと止む。それからまた、遠くから恐怖の重低音と共にぶつかってくるのだ。
全力をかけてテントを押さえるのに、たまに風に押されて転がってしまう。途中、風の隙をついて、大急ぎでテントの向きを変えて風の当たりを軽くさせてみた。それでもやっぱり、風との闘いが続いた。ひっくり返ればその隙にどこかがバリバリっと音をたてる。
本気で怖かった。日本にいて、風をこんなに恐ろしいと思うことがあるなんて、思いもよらなかった。
長すぎる夜が明けた翌朝、テントを開けて静まり返ったキャンプ場を眺め渡すと、近くのファミリーテントはみんな潰れて消え去り、ライダー達の簡易テントは破れてポールが突き出したり、中の人たちがトイレなどに避難している間に、山の中に飛んでいってしまったりしていた。
私のテントのポールも折れていた。
ものすごく衝撃的な出来事だったのだ。
そして、それで私は、知床(とくにR臼)に惚れ込んだ(笑)
そんなことを思い出す、今日の天気だった。
山の紅葉みんな飛んでいったって(;_;)ていうか青い葉っぱもちぎれまくりの飛びまくりだったぞ。
by ushimaton
| 2006-09-28 20:04
| ほたてにっき
気が小さいのに、珍しいものは好き。 道草を喰って、たまに反芻したり。 牛歩ではありますが。
by ushimaton
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