違うけど同じもの
遠く中国地方の某県から、ボランティア希望の方が来た。
活動期間は、ほぼ半日。
東京に用事ができたため、それと合わせて、
「ずっと行きたいと思っていた」
被災地ボランティアにいらしたのだという。
知人の伝で、私たちのところに来た。
自治会の防災関係を担当されているらしい、60代くらいの男性だった。
たったの半日だとしても、せっかく来てくれるのだから、何か得るものを見つけて行ってもらいたい。
「何かをする」ために来るボランティアの受け入れ側でも、
いつも私たちは私たちなりに、いろいろと考えて受け入れる。
地元スタッフのSさんとコンビになってもらって、送迎に入っていただくことにした。
今、私たちの団体のスタッフの過半数は、地元石巻の人間。
地元の人の気持ちの中には、
「観光スポットみたいなノリで見に来ないでほしい。」
という気持ちと、
「来てくれたからには、ここの被災状況を見て知ってもらいたい。」
という気持ちがある。
一見矛盾しているようで、実は同じ事を言っているともいえる。
その二つの違いは、救いがたいほどの大きな開きがある一方で、紙一重でもあるかもしれず。
ともかく、
「わざわざ遠くからボランティアを希望して来てくれた。」
というだけで、地元スタッフは皆、とてもまじめに受け入れる。
自分自身の被災について教え、利用者である被災した方々の状況を説明し、
車窓の外の瓦礫の山や仮設住宅について説明する。
今回来てくれた方のポケットから、ピッ、ピッ、という定間隔の電子音がずっと聞こえていた。
「何の音ですか?」
その方は、ポケットから小さな機械を取り出した。
「放射線の測定器ですわ。」
絶句……。
東北の被災地=放射能、という短絡的な考え方。
東北に行くから測定器を持ち歩こう、という考え方。
被災者と向き合って、被災者であるスタッフとともに歩きながら、
ポケットでガイガーカウンターの電子音を鳴らし続ける神経。
そして、車の中で数字の上下を眺めながら、風向きがどうのこうのと口に出す神経。
たとえば、
「ここは放射線量が高いですね。」
と伝えたところで、何ができる?
それがどれだけ不快な思いを与えることのできる魔法の言葉なのか、
私自身も、この日に初めて知った。
ほんの少しでいいから、
もしも自分がここに住む人だったら、と
家族を失い、子供は東京からめったに来ることなく、足を引きずって人里離れた仮設住宅で一人
ただ日々を送る、あなたが今運んでいる後部座席のその人だったら、と。
運転席でハンドルを握っている、身一つのほかのすべてを流されたその人だったら、と。
おそらく、この方の感覚が、この方一人だけとび抜けてずれているものではないのだろう。
何がおかしいの??と思う人もいるだろう。
私も、ここにいなければ違っていたのかもしれない。
住民が自分で放射線を気にして機械を持っているのと、
たった一日滞在する人がポケットで電子音を鳴らしているのは、
それこそどうしようもないほど違う。
ここでは、住んでいる誰もが、自分たちの街の放射能についての心配を口にしない。
実際に心配していない人が大半であり、
それどころではない、という人がやはり大半でもある。
心配したところでどうもできねべっちゃ?ということでもある。
温度差とか、感覚の違いというのは今に始まったことではなく、
全く仕方のない事でもあり、
私と被災者の間にも、被災者と他の被災者の間にも、どうしても越えられないものはある。
違いは、違いであり続ける。
私が東日本大震災で津波の被害を受けなかったのは絶対に変わらない事実だ。
だけど、
並んで歩くことは、できる。
足を引きずるおじいちゃんの手を引くことができるのは、私が足を引きずっていないから。
何が必要なのか。
それは、ほんとうに、ちょっとの想像力なんだ。
ちょっとだけど、絶対に、必要なんだ。
世の中のすべてに。
人間にはそれができるから。
活動期間は、ほぼ半日。
東京に用事ができたため、それと合わせて、
「ずっと行きたいと思っていた」
被災地ボランティアにいらしたのだという。
知人の伝で、私たちのところに来た。
自治会の防災関係を担当されているらしい、60代くらいの男性だった。
たったの半日だとしても、せっかく来てくれるのだから、何か得るものを見つけて行ってもらいたい。
「何かをする」ために来るボランティアの受け入れ側でも、
いつも私たちは私たちなりに、いろいろと考えて受け入れる。
地元スタッフのSさんとコンビになってもらって、送迎に入っていただくことにした。
今、私たちの団体のスタッフの過半数は、地元石巻の人間。
地元の人の気持ちの中には、
「観光スポットみたいなノリで見に来ないでほしい。」
という気持ちと、
「来てくれたからには、ここの被災状況を見て知ってもらいたい。」
という気持ちがある。
一見矛盾しているようで、実は同じ事を言っているともいえる。
その二つの違いは、救いがたいほどの大きな開きがある一方で、紙一重でもあるかもしれず。
ともかく、
「わざわざ遠くからボランティアを希望して来てくれた。」
というだけで、地元スタッフは皆、とてもまじめに受け入れる。
自分自身の被災について教え、利用者である被災した方々の状況を説明し、
車窓の外の瓦礫の山や仮設住宅について説明する。
今回来てくれた方のポケットから、ピッ、ピッ、という定間隔の電子音がずっと聞こえていた。
「何の音ですか?」
その方は、ポケットから小さな機械を取り出した。
「放射線の測定器ですわ。」
絶句……。
東北の被災地=放射能、という短絡的な考え方。
東北に行くから測定器を持ち歩こう、という考え方。
被災者と向き合って、被災者であるスタッフとともに歩きながら、
ポケットでガイガーカウンターの電子音を鳴らし続ける神経。
そして、車の中で数字の上下を眺めながら、風向きがどうのこうのと口に出す神経。
たとえば、
「ここは放射線量が高いですね。」
と伝えたところで、何ができる?
それがどれだけ不快な思いを与えることのできる魔法の言葉なのか、
私自身も、この日に初めて知った。
ほんの少しでいいから、
もしも自分がここに住む人だったら、と
家族を失い、子供は東京からめったに来ることなく、足を引きずって人里離れた仮設住宅で一人
ただ日々を送る、あなたが今運んでいる後部座席のその人だったら、と。
運転席でハンドルを握っている、身一つのほかのすべてを流されたその人だったら、と。
おそらく、この方の感覚が、この方一人だけとび抜けてずれているものではないのだろう。
何がおかしいの??と思う人もいるだろう。
私も、ここにいなければ違っていたのかもしれない。
住民が自分で放射線を気にして機械を持っているのと、
たった一日滞在する人がポケットで電子音を鳴らしているのは、
それこそどうしようもないほど違う。
ここでは、住んでいる誰もが、自分たちの街の放射能についての心配を口にしない。
実際に心配していない人が大半であり、
それどころではない、という人がやはり大半でもある。
心配したところでどうもできねべっちゃ?ということでもある。
温度差とか、感覚の違いというのは今に始まったことではなく、
全く仕方のない事でもあり、
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人間にはそれができるから。
by ushimaton
| 2012-05-27 10:52
| 東日本大震災
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by ushimaton
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嬉しくありがたく
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