ことのは拾遺

移送という活動に携わらせていただいている関係上、車の中での、お乗せした方との会話の時間などがある。
人の心をほぐすすてきなワザを持っているメンバーの方達は、車の中で目いっぱいの笑顔を作り出す。
すごいなあ。
旦那さんの入院が決まり、自分は一人、真っ暗闇の壊れたおうちの2階に戻らなくてはならないお母さんが、車の中で笑い声を上げる。
お誕生日の女の子を乗せたときは、車中と無線を使ってハッピーバースデー。
ほんのつかの間でも、不安に心を持って行かれない時間。
何度かご一緒した方は、段々いろいろな事を話して下さるようにもなる。

誰もが大きなダメージを受け、それを抱えて生きている。
ああせめてあなたが生きていてくれてよかったね、そんな言葉をかけたくなる。

足の悪いご夫婦。
大津波警報の中、遠くへ逃げることもままならず、迫る水に追い立てられるように、近くの家の戸を叩いた。
「助けてください!って。そしたら、みんな避難したおうちだったみたいで、鍵を開けていてくださったんですよね。それでどなたかは分からないけどお邪魔させていただいて、二階に上がっている間にどんどん水が来て、そのお宅の2階にしばらく閉じ込められていました。あのおうちが開いていなかったら、私達助からなかったね。」
そんな瀬戸際の状況になっても、決して一人がもう一人を置いて行くことなく、共にいたご夫婦。
それだけで、胸がいっぱいになる。

地震の直後に大型スーパーの屋上に避難して、屋根の上から流されていく人々を見るしかなかったという方達。
一人の女性が悲鳴を上げながら流れてきて、たまたまそのスーパーの一部に引っかかったのを見て、屋上にいた男性数名が水に飛び込み、女性を助け上げたという。

大津波警報のサイレンを聞き、逃げようと夫を引き起こした時に家に水が流れ込んできたという老夫婦。
そのまま水は天井近くまで上がり、二人は水を飲み込みながら何時間も家の中で天井近くに浮かんでいたという。
その時に飲み込んだ水がもとで体を壊し、通院中だった。

施設が水に飲まれ、寝たきりのおじいさんが間に合わず流された。
職員が叫ぶ中、なんと、そのおじいさんは、泳いだのだという。
自力で泳いで職員のもとまでたどり着き助かった。
やせてもかれても石巻の海の男。すごすぎる。

自宅の2階で、家の中を流れ去っていく水や車に途方にくれ、様子を見ようと上から覗き込んだところ、1階のカーテンに小学生の女の子が必死にしがみついていて、それを引き上げたというお話。

書きつくせないさまざまな思い、記憶。
「こんなすごいことあったんだって」と言いたいわけではない。
いや、ある意味ではそうだとしても、とにかく知って欲しい。
「もう震災の話はうんざり」と言ってテレビのチャンネルを変え、バラエティーを見るのもいいだろう。
だが、もううんざりと言って目を背けようが、そこに人は生きている。
笑って元気に過ごすことはとても大切。
笑いながら、忘れないで欲しいと思う。

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「写真に撮っていってください、私達がどうやって寝ているか、避難している場所がどういうところか。」
ベッドをお届けした、体の不自由なお父さんに言われて、撮らせていただいた。
「私は津波のときは入院していたんですが、家族はここ(今は避難所になっている自宅)から離れた地区で被災しまして、3日間かけて山の中を歩いてたどり着きました。」
「夜になっても、暗闇の水の上から、人の声が聞こえていました。でも朝になったら静かになっていました。もっと暖かい季節だったら違ったかもしれませんね。」



避難所からの買い物送迎をしたお母さんは、おそらく私と同年代くらいで、ものすごくパワフルでエネルギッシュだった。

「やっぱりね、ボランティアの人たちは、私達とは違うんですよ。帰る場所があるんだもの。私ね、ボランティアの人たちには、『あなた達は勉強のために来ているんですもんね。』って言うんです。私達にとっては生きるか死ぬかの生活の場だけど、ボランティアさんにはそうではないんです。」
「………。」
「そうでしょ、ほとんどのボランティアさんの気持ちのどこかには、“見たい"っていうのがあるでしょ。観光って言ってはなんだけど、壊れてめちゃくちゃになった街を見てみたい、って気持ちはあると思うのね。だから、そういう人たちの、今後の勉強になればいいのかなって思うんです。」
“違う"とかなんだとか、うわべを撫でるような返事をしたくなくて、私は頷きながら聞いた。
「被災者の人たちの役に立ってる、何かしてあげてる、って、思ってるけど、本当は被災者のためじゃないっていうか…。」
その違和感、私も良く分かる。私自身が同じような気持ちを抱くときがある。
ボランティアが、他所から来ている人が、被災者と同じような境遇ぶったり、気持ちが分かるようなことを言ったり、それって実はなんか違うのかもしれない。
私が、「どんどん利用しちゃえばいいんですよ。ボランティアの人たちの自己満足を。“被災者の為に何かしてあげてるー”って浸っているボランティアだって実際役に立っている部分もあるから、勘違いされてるんだとしても、こっちはこっちで、使っちゃうんでいいと思いますよ。」
そう言ったら、いきなりそのお母さんが身を乗り出して私の手を握った。
「あなた、お名前、何ていうんですか!?これからもよろしくお願いします!」

別れ際、思わず私の口から出た言葉。
「また、…遊びましょうね。」
お母さんもニヤリと笑って、
「遊びましょう。」
と言った。

ボランティアは、被災者に「何かしてあげる」という立場であるものだというアタマをぶちこわす出会い。
無意識に潜む「してあげる」「してもらう」の優劣意識のようなもの。
たまたま被災した人とそこにやってきた人というだけなんだ、ということ。

勘違いヤローどもを、どんどん利用しちまってください。被災地の皆さん。

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今夜の夜行バスで、戻ります。
by ushimaton | 2011-05-04 18:58 | 東日本大震災


気が小さいのに、珍しいものは好き。 道草を喰って、たまに反芻したり。 牛歩ではありますが。


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